寝床の女

 

女には、
飾らずとも色気が匂い立つ瞬間がある。
それは一体なぜなのだろうと
身支度をしながら考えた。
女の寝顔を、見ながら。

そっと寝床を抜け出そうとすると、
く、と裾を引かれた。


「もう帰らはるん?
いけずなお人やなぁ」


黙って女を見ると、
甘えた目をして唇を吊り上げた。
その表情から色香は消えていた。
代わりにあるのは毒のような…


「また来てな」


俺は返事をしなかったが、
再びこの襖を開けるのは分かっていた。
その証拠に、
女はあっさりと着物の裾を離し
のんきに欠伸までして見せた。
俺は着物を掻き寄せると、布団にもぐりこむ
女を見ないようにして、一人静かに部屋を出た。

 

 

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