戻
氷原には轟々と風がふいていた
湖面の氷が割れていても、春の訪れはまだ先だ。
十分でない防寒に、手先がわずかに震えていた。
照準を合わせながら、押さえつけていた虚しさが、影のようによぎる。
自分がこの引鉄を引くことに何か意味があるのだろうか それで何かが変わるのだろうか
積年の恨みを忘れ俺はとまどった。目の前の老人に、いったいこれから何ができるというのだろう。
そして、
彼を殺した後の俺は何をすればいいのだろう